【DIY】冷え冷えカセットボンベ(CB缶)は自作ウォーマーでパワーアップ

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カセットガスは手軽に使える便利な燃料ですね。
ただ、使用中にガスが気化することでボンベが冷却され、ガスの圧力が低下するという欠点があります。
寒い季節のキャンプでは、コンロを持参しても、普通のカセットガスでは全く使えなかったりします。
おうちの庭で、時々、カセットガスの草焼きバーナーで雑草退治をしているのですが、4月頃の気温でもすぐにボンベが冷え、火力が弱まるので困っていました。

なんとかしたいと電熱式のボンベウォーマーを自作してみたら、実に効果的。

効果の検証も納得できたので、作り方を紹介します。

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カセットガス式のウイークポイント

草焼きバーナー「ちょろ焼きくん」

庭の草焼きに使っているのは、画像にある新富士バーナーの「ちょろ焼きくん」。
メーカーのHPではカラーの違う新型が出ているようですが、性能は変わらないようです。

新富士バーナー「ちょろ焼きくん」

カセットガス式で、名前どおりのちょろい火力なので、青々した生の草を焼き尽くすには、1本だけでも十数秒かかります。

こんなんでは役に立たんがな。

いきなり不燃ゴミになりかけましたが、数回使用するうちにコツがわかってきました。

そもそも草というもの、灰になるまで焼き尽くす必要はなかったのです。
萎びる程度にサーっと炙ると、葉も茎もすっかりダメージを受けて、2,3日後には草の形はなくなってしまいます。

さすがに土中の根にダメージを与えることはできませんが、2,3週間はきれいな状態を保てます。

ただ、問題がありました。
ちょろ焼きくんは、本来の火力が維持できれば十分役立つはずですが、使い始めると、10分ほどでちょろ焼きどころかチロチロと情けない炎になってしまうのです。

気化熱でボンベが冷却され、ガス圧が低下するドロップダウンという現象です。

カセットガスを使いこなす方法

スーパーなどで安く販売されている3缶パックのボンベの中身は、液化ブタンガスです。

液化ブタンの沸点は-0.5℃なので、氷点下になると全く使えません

なので、器具メーカーは、中身がイソブタンのボンベやプロパンガスを混入した強化版ボンベを推奨しています。
イソブタンは沸点が-11.5℃ですし、プロパンガスは沸点が-42℃と特に低いため、ある程度混入してあれば低温に強いのでしょう。
でも純正のガス缶は高価なので、日常使いだとランニングコストが気になりますね。

こうした欠点を意識してか、大手メーカーのカセットコンロの場合は、低温下でも使用できるようドロップダウン対策がしてあります。
ボンベをセットする場所に「ヒートパネル」という金属板を取り付け、炎の熱をボンベに伝える仕組みです。

カセットコンロのヒートパネル
イワタニカセットフーのヒートパネル

カセットコンロは、広く普及してユーザーが多いだけに、低温で使いきれなかった缶が廃棄されると爆発事故の原因となる恐れもあって、安全性という観点から取り付けられているようです。

カセットコンロ以外では、屋外用のツーバーナーコンロなんかには後付けできる「パワーブースター」とか「パワーインクリーザー」なるものがオプションで用意されていたりします。

パワーブースターとパワーインクリーザーの例

いずれも原理は熱伝導ですが、残念ながらちょろ焼きくんに流用できるものはありません。
このままちょろ焼きくんが不燃ゴミ行きするのは忍びないので、パワーブースターを手作りすることにしました。

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手作りパワーブースター

カセットボンベを温めるには

ちょろ焼きくんはカセットコンロとは全く構造が違い、火口とボンベがかなり離れています。
炎の熱を伝えるのは、一見して無理そうですね。

ちょろ焼きくんの構造

熱伝導方式が難しいなら、電気で暖める?

本当は、炎の熱を利用するのがシンプルで良い方法ですが、金属の加工や熱の伝わり具合の調節などは非常に難しいと思います。

電熱を利用する場合は電源が必要なのと、温度の調節方法も考えないといけませんが、熱伝導方式よりは工作しやすい気がします。

実際、作ってみました。

電熱式「カセットボンベウォーマー」

熱伝導式の「パワーブースター」というのは力強くていい名称ですが、自作したのは電熱式でほんわり温めるので、自分では「カセットボンベウォーマー」と呼んでいます。

数年前に1号機を作って、そこそこ使えていたのですが、今回、改良版として2号機を作りました。

カセットボンベウォーマー1号機

手作りカセットボンベウォーマーの1号機

この1号機は作る過程を残していなかったので、概略を紹介します。

温度調節は、ボンベの温度をみながら、電圧調整ツマミを回します。

カセットボンベウォーマー1号機のコントローラー


ケースは、ダイソーのゼムクリップのプラ容器。
12Vデジタル温度計と電圧を変えるPWMコントローラを組み込んでいます。

ケースをちょろ焼きくんに取り付ける部分は、100均スマホスタンドのボールジョイント部を切り取って利用しました。

コントローラー取り付け部のボールジョイント

簡単に付け外しできるのがいいです。

コントローラー取り付け部

缶に巻き付けるヒーター部は、0.5mm厚アルミ板と発泡ゴムシートを張り合わせた間にニクロム線と温度センサーのサーミスタを挟み込んであります。

カセットボンベに巻き付けるヒーター部

ニクロム線は、カー用品のペットボトルウォーマーのものを流用。

締め付けベルトは、ダイソーの自転車コーナーにあった裾巻きベルト。

電源は、アマゾン単3ニッケル水素電池10本です。

カセットボンベウォーマー2号機

2号機の特長

1号機をより使いやすく改良しました。

カセットボンベウォーマー2号機
カセットボンベウォーマー2号機の温度コントローラー


改良して良くなったところは、
・デジタルサーモスタットで温度調節を自動化
・ニクロム線からフィルムヒーターに変更
専用ケースを自作

主な材料

バイク用のハンドルグリップヒーター
フィルムヒーター部分のみを使います。
ヒーターの抵抗は1枚が12Ω、並列で配線されていたのでコードの両端では6Ωでした。
寒風にさらされるバイク用なので、発熱量はそこそこありそうです。

バイク用ハンドルグリップヒーター

ヒーターを挟み込むアルミ板と発泡ゴムのシート

ヒーター部の材料

12Vデジタルサーモスタット
設定した温度の範囲内で内蔵リレーをON・OFFします。

12Vデジタルサーモスタット

ケースの製作

ケースは3Dプリンターで自作しました。
ちょろ焼きくんへの取り付け部分は1号機で工作したボールジョイントを利用します。
ケースにボールジョイントの受け部分をはめ込む形にしました。
フタを留めるためのナットを四隅に埋め込みます。

3Dプリンターで自作するケースのモデリング

本体の素材はPETG、ボールジョイントの受け部分は柔らかいTPUでプリントします。

コネクタ類は、電源用のDCジャック、ヒーターとサーミスタ用はXHコネクタをユニバーサル基板に固定して取り付けます。

自作する温度コントローラー部の構成部品

組み立てました。

温度コントローラー部の外観と内部

サーモスタットの取説は日本語でないので、図を見て配線。

サーモスタットの取扱説明書

ついでにヒーター側に取り付けるコネクタも作っておきました。
コネクタを押し込みやすいよう、柔らかいTPUフィラメントでプリントしています。

カセットボンベのヒーター部の組み立て①
コネクタの部品
カセットボンベのヒーター部の組み立て②
コネクタの組み立て
ボンベ用ヒーターの製作

カセットガス缶の外周は21cm。

カセットボンベのヒーター部の組み立て③
ボンベの外周サイズの測定

150x300x 0.5mm アルミ板を、少し小さく19cm幅にカットします。

カセットボンベのヒーター部の組み立て④
グリップヒーターとアルミの薄板

薄い0.5mmのアルミ板は、カッターナイフで10数回切ると、切れ目で簡単に折れます。

カセットボンベのヒーター部の組み立て⑤
アルミ薄板のカット

発泡ゴムシートは外側に巻くので、アルミ板より若干長めにカットしています。

アルミ板を缶の形に曲げる方法。
アルミ板をクッション性の高い梱包材の上に置き、直径5センチ程の丸棒で、手打ちうどんを延すようなイメージでゴロゴロと転がすと、きれいに曲げられます。

カセットボンベのヒーター部の組み立て⑥
アルミ薄板を円筒形に曲げる方法の図解
カセットボンベのヒーター部の組み立て⑦
カセットボンベ缶に巻けるように加工したアルミ薄板

これから貼り合わせる材料です。

フィルムヒーターとサーミスタをコネクタにつないでおきます。

カセットボンベのヒーター部の組み立て⑧
コネクタとつないだフィルムヒーター

貼り合わせには強力両面テープを使いました。

カセットボンベのヒーター部の組み立て⑨
両面テープを貼り付けたフィルムヒーター

真っ直ぐに貼ったつもりですが、ちょっとねじれてしまいました。

上から発泡ゴムシートを張ります。
粘着シートになっているので簡単でした。

カセットボンベのヒーター部の組み立て⑩
発泡ゴムシートを貼り付けたヒーター部

出っ張っているコードの部分を、シートの端切れで覆いました。

缶に巻いて締め付けるベルトは、ダイソー自転車用品の裾巻きベルトです。

カセットボンベのヒーター部の組み立て⑪
カセットボンベにヒーターを巻き締めするためのベルト

一部がゴムのマジックテープなので具合よく締め付けができます。

完成したヒーター部

これでヒーター部は完成です。

電源は単3充電池

電源は12V。
腰のベルトに挿し込めるケースにバッテリーを入れています。

12Vバッテリーケース

中身は、アマゾンブランドの単3ニッケル水素電池10本を直列。
DCジャックに繋いであります。

バッテリーケース内部の単3ニッケル水素電池

これで完成

完成した自作カセットボンベウォーマー2号機

振りえってみると結構な手間でしたが、あれこれ考えながらやるのが楽しいDIYです… ♪

使える?市販のお手軽ウォーマー

自作ボンベウォーマーは、今や、庭の草焼きの必需品なんですが…

ある日、ネットを見ていたら、こんなものを見つけてしまいました…

ガスウォーマー ZEROブタン

韓国製の「ZEROブタン」という製品で、電気ヒーターでカセットガス缶の底部を温めるようになっています。

良いと思ったのは、缶の底に取り付けるヒーターが嵩張らないので、ほとんどのカセットガス器具に使えそうなところです。
それに、使用する電源が12V 1.5A(18W)以上となっていますので、ヒーターが発生する熱量は、ガスの気化によって奪われる熱を補うのに十分だと思います。
(その根拠は、この記事の次の項「検証! ウォーマーの能力はどれくらい?」をご覧ください。)

ただ、こういった商品は、実際に使ってみないと自分の用途に合うものかどうかわかりませんし、無責任にお勧めするつもりはありません。
価格もそこそこしますので、ご自分で有用性を見極めた上で試してみるのが良いでしょう。
その場合、気をつけるべきは電源。
USB電源とはいっても、5Vのモバイルバッテリーでは使いものになりませんから、12V 1.5A以上の充電器かモバイル電源を用意しましょう。

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検証! ウォーマーの能力はどれくらい?

ホントに、単3充電電池の電力とバイク用のグリップヒーターで、使用中のカセットボンベを適温に保つことができるのか‥

1号機がそこそこ使えていたので大丈夫とは思うのですが、一応、能力を検証してみました。

要するに、ブタンガスの気化によって奪われる熱量を、ヒーターの発熱で補うことができればいいわけですね。

気化熱 VS ヒーターの発熱量

必要なデータを調べて計算してみました。

ちょろ焼きくんの使用中にガスの気化で奪われる熱量は…

ブタンガス250gの缶で燃焼時間が90分ということなので、毎秒の消費量は 0.0463g。 
ブタンガス1gの気化熱が92calなので、奪われる熱は毎秒 4.26cal
単位をジュール(J)に換算すると 4.26cal×4.186=17.83 J

毎秒1Jの熱量を発生する電力は1Wなので、奪われる熱量を補うのに必要な電力は17.83Wということになります(これは、市販の「ZEROブタン」が必要とする電源12V 1.5A(18W)と合致しますね…)。

では、自作ウォーマーの実力はどうか‥

下の画像は、電源(アマゾン単3ニッケル水素電池を10本直列)に繋いで電圧と電流を測定したものです。

ボンベの温度は 27℃~25℃の範囲に保つようにセットしています。

ウォーマーの温度制御をするサーモスタットの表示

サーモスタットがONのとき、電圧11.1V、電流1.73Aということは、ヒーターの出力は19.20Wということになりますね。

必要な電力 17.83Wに対してウォーマーの能力は 19.20Wと上回っているので、サーモスタットや周囲への熱の損失を考慮しても、ぎりぎりセーフでしょう。
本当は、1.5倍くらいに余裕があるといいのですが‥

まあ、何はともあれ、実際に使えてますから良しとします。

バッテリーの使用時間は?

電源は、アマゾンの単3充電池1.2V 2400mAhを10本直列で使用しています。

サーモスタットONのときの電流が 1.73A(1730mA)ですから、1時間以上は使用できるでしょうか。
ただ、実際には徐々に電圧も下がりますし、使ってみて、体感的には1時間程度が限度かと思います。

使用中の自作カセットボンベウォーマー

電源は単3充電池。
1時間そこそこの使用時間ですし、電力をムダに使いたくないですね。
なので、寒い時期は、キンキンに冷えたボンベでなく、室温くらいの温かいボンベを取り付けて使用しています。
比熱が0.57の液体ブタン250gを、10℃から25℃まで温めるとしたら、10分近くの電力をそのために使うことになりますから。